好きな映画3選シリーズ、パート3です!
今回はTさんの3選!
1本目は『バジュランギおじさんと、小さな迷子』
出典:https://eiga.com/movie/82542/photo/
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「嘘がつけないインド人のおじさんが、喋れないパキンスタン人の迷子を家に返してあげようとがんばる話。 インド・パキスタンが仲悪いので、嘘がつけない・喋れないという縛りによってハラハラ展開。景色の美しさとスリル・踊り・音楽・笑い・涙の全部のせ。」とコメントしていただきました。
日本でも昨今インド映画が話題となっていますね!
宗教観の違いという一見重めかしいテーマを扱っていますが、軽快なミュージカル要素や個性的なキャラクターたちによって非常に見やすい作品になっています!
はじめてインド映画を見る方にはとくにおすすめしたい作品かもしれないです!登場人物のキャラクター性や思想、ストーリー展開も分かりやすく、コメディ要素も多いのでミュージカル映画として心地よく見れると思います!
映像は序盤からとても華やかで、美しい山脈の風景から続いて赤を基調とした華やかなパレードとミュージカルなど賑やかなシーンが多いです!ミュージカルシーンの完成度はさすがインド映画!といったところ。ダンスの一体感や演出、見ているとなんだか元気になれます!
ただ日本人からすると劇中の宗教、宗派というものを意識して日々を過ごしているインド圏の人々は少し馴染みない感覚かもしれません。多神教という点で日本神話と共通点もありますが、ヒンドゥー教(とくにラーマ神、ハヌマーン神)の宗派について少し調べてから作品を鑑賞することで文化背景を知れて、ストーリーの理解が深まると思われます。次いで、パキスタンとなぜ対立しているのか、「インパ分離」についても事前に把握しておくことをお勧めいたします。それらを知った上で鑑賞することで、主人公らの行動原理と、いかに困難なことを彼らが行おうとしているかが理解できて、より一層作品を楽しむことができることでしょう!
異なる宗教観を持つもの同士の溝というのは古く在り、争いがある度に理解の手段が論じられてきました。
本作品の主人公パワン(バジュランギおじさん)は自身の信仰にかたく従事し清く生きることを貫いてきました。そんな彼が自分と正反対に位置するシャヒーダ(小さな迷子)と関わることは面倒極まりなく、避けたい事柄ですが、それでも良心の呵責に耐えかねたパワンはシャヒーダを助けることを選びます。彼女と旅に出ることでパワンは自身の中の先入観や偏見に改めて気づくようになります。信仰に沿って真っ直ぐに、素直に、正直に生きてきた分、その外側に在る物事に対する見方というのは凝り固まってしまうものなのでしょう。自身のもつ固定観念を旅先で出会う人々によって少しずつ改められていった彼は、他者のもつ信仰に尊重の念を抱くようになります。だからといって彼自身の信仰が揺らぐというわけではなく、自身の信仰を守ることと異なる信仰を尊重することは成り立つということを彼は最後に体現しました。その姿勢はたしかに周りに伝わり、影響を与えるに至ったのです。「人と人とは理解し合える」という使いまわされ続けた綺麗事ですが、宗教観の入り混じりがとくに複雑なインドだからこそ、このテーマを伝える重要性を理解しているのだと思えます。劇中、主人公に向けて「君のような人が両方の国にもっと増えたらいいのに」というセリフがありますが、そのような願いがこの作品の制作には込められているのだと強く感じられました。
アップテンポに進んでいく本作品、最後まで楽しんで見れた上で考えさせられることがしっかりと得られます!!
2本目は『黒猫、白猫』
「展開がわーっとうまく最後にはうまくおさまって気持ちよくみられる映画。ユーモアとロマ音楽。」とコメント!
セルビアのロマンティック・ブラックコメディで、観賞後の満足感がとても高い作品!
タイトルに猫と置いてありますが、劇中での登場頻度は高くないのは注意点です。ただ猫以外にも動物が沢山出て来てとても賑やかなシーンが多いです!エミール・クストリッツァ監督の作品に登場する動物は何かしらの象徴として置かれていることが多いらしく、本作品にもメッセージ性を感じるような登場のさせ方をしたシーンが多いです。黒猫、白猫、豚、ガチョウに注目ですね!ガチョウの扱いの酷さには笑ってしまいました…!
登場するキャラクターたちの話に移りますが、一言で表せば全員「理性が蒸発している」でしょうか。本稿のPart-1に『RED』という作品を紹介し、キャラクターがぶっ飛んでるとコメントを書きましたが、比じゃないレベルです。ベクトルが違うとも言えますが、全員が圧倒的なまでに利己的に行動するので、彼らの素行に見慣れるまでに口が閉じることはないでしょう!また、コメディとは称していますが、舞台となる地域特有の固定観念から脱却しようとする主人公らと、それに縛られ、呪いのように巻き込もうとする周りの構図は閉鎖的村社会へのアンチテーゼを真正面から描いているとも感じられました。
猫といえば自由奔放、思うがままに生きる動物です。劇中の彼らも思うがまま生きている者ばかりで、運命の相手と添い遂げたい、ギャンブルに明け暮れたい、祖先に呪われたくないから身内を早く結婚させたいetc…と周りの後先など考えず自分のしたいことをする色んな猫、動物がいます。では、タイトルの「黒猫、白猫」は誰と誰のことを指しているのでしょう、彼らの衣装に注目ですね。
何よりこの作品は構図や色彩がとても綺麗に描かれているシーンがいくつもあり文字通り絵になるような見栄えです!!
そして最後、エンドロールに入る前のカット、あるワードが表示されるのですが、これがなんとも面白い。ブラックコメディなだけあって最後の最後にこれは皮肉なのではないかとニヤッとしてしまいますね!!
最後は『霧の中のハリネズミ』(霧に包まれたハリネズミ)
出典:https://eiga.com/movie/76386/gallery/2/
(C)2016 F.S.U.E C&P SMF
「不朽の名作アニメーション。やわらかい線・テクスチャのキャラクターやコマアニメだからこその可愛らしい動き。ハリネズミがはっとした顔がかわいい。」とのこと!
ロシア(ソ連時代)で製作された短編アニメーションで、多層のガラス面に切り絵を配置する独自の手法で描かれています。
初見時にはトーンの低い雰囲気に不気味さを感じたり、霧の中で起こることに音響も加わってドキドキします。森の中の霧を巧みに表現されていて、ハリネズミのCVも呟くような声量で喋るため、作品をとても近い距離で感じられる気がします…!
そして霧の中で出会う美しいもの、変なもの、親切なもの、どれもが幻想的で可愛らしく作られていてとても愛らしいです。
最後にハリネズミの友人が登場すると、なんだか見ているこちら側まで落ち着くというか、肩の力が抜けましたね。
先日モスクワ地下鉄では本作品監督のユーリー・ノルシュテインさんの80歳を記念したデザインの交通カードが発行されるなど、今でも愛され続けている作品のようです。
以上Tさんの好きな映画3選でした!
どの作品も色彩遣いが素晴らしくアーティスティックですね…!!
GYROのメンバーはみなアートアニメが好きで話も大変盛り上がりました!!
作品によってみれる媒体に限りがありますがどれもおすすめです!機会があれば是非ご覧ください!